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NO. 295

新型コロナウイルス感染症 ]

2021年4月

 新型コロナウイルスの感染症はまだまだ続くようです。日本小児科学会から、2021年3月23日に発表された、変異株についての資料を紹介いたします。

『子どもと新型コロナウイルスの変異株の感染について』
         日本小児科学会 予防接種・感染対策委員会

 2021年に入り、国内外で新型コロナウイルスの変異株(へんいかぶ)の感染が広がっています。子どもは、新型コロナウイルスにかかっても症状が出なかったり、出たとしても軽くすむことが多いことが知られていますが、変異株に関しては、どうでしょうか?

  そもそも、ウイルスの変異株はどうして起こるのでしょうか?ウイルスは細菌と異なり、 自分で増えることができないので、必ず人や動物の細胞が必要です。つまり、人に感染するウイルスであれば人の体の中でうまく増えて、他の人に感染させることが、ウイルス自身が生き延びていくうえで極めて大事になります。ウイルスは DNA あるいは RNA と呼ばれる遺伝子を持っていますが、コロナウイルスをはじめとする RNA をもつウイルスは、一般的に自身の遺伝子を増やす際に失敗する(遺伝子変異)頻度が高いとされています。ところが、失敗のはずの遺伝子の変異が、たまたま人の中で増えて他の人に感染させる効率を上げたり、ワクチンなどで作られた体を守る働き(免疫)から逃れたりする効果を持っていた場合には、その変異したウイルスの方が感染の拡がりに有利な条件を持つようになります。よって、現在、英国、南アフリカ、ブラジルなどで問題となっている変異ウイルスの出現は、ある程度想定されていたことです。

  変異株は、これまで流行していた株(既存株)に比べ、1 人の感染した人から他の人へ感染させる力が強いことが知られています。いくつかの変異株が、世界各地から報告されていますが、英国で流行が始まり、現在、国内でも多く見つかっているものは、最大 70%感染力が高い(これまでに比べ、1.7 倍の感染力)ことが示されています。国内では、子どもが集まる施設で、この変異株によるクラスターの報告がされ、多くの子どもが感染しています。 ただ、変異株が既に広がっている英国ロンドンでは、変異株による感染は、特に子どもに多いということはなく、成人と子どもの感染者の割合は変異株の出現した前後で大きく変わっていません。

 また一方で、変異株が子どもに感染した場合、既存株と異なる経過を示すことはないと報告されています。子どもでは感染者の多くが無症状から軽症で、既存株でも変異株でも その違いはありません。頻度の高い症状としては、発熱、せき、鼻水、下痢、頭痛などがあげられます。変異株が子どもにより重い症状を引き起こす可能性を示す証拠はこれまでに得られていません。

  変異株への対策は、これまでと変わりはありませんが、特に感染力が強いウイルスは、感染対策が上手くできない小さな子どもへの感染の広がりが心配されています。今後、国内での変異株の広がりと、子どもの感染者について慎重に見ていく必要があります。

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