NO. 275 煙の出ないたばこの受動喫煙2019年8月 前回は「新しいたばこの誤飲」の危険性について書きましたが、今回は、「煙の出ないたばこの受動喫煙」です。 たばこを吸う人が吸う煙が「主流煙」、たばこの先端から発生する煙が「副流煙」、たばこを吸う人が吐いた煙が「呼出煙」といいます。そして、受動喫煙とは、「副流煙」と「呼出煙」を吸うことです。 受動喫煙による年間死亡数の推計値は、2014年では、15030人とされています。肺がんが約2500人、虚血性心疾患が約4400人、脳卒中が約8000人、そして乳幼児突然死症候群が73人です。 乳幼児突然死症候群とは、乳児、とくに生後6か月までの赤ちゃんが、それまで全く健康だったのに突然亡くなることで、解剖などの検査をしても特別な原因が特定できない状態です。そして、生前の赤ちゃんの周りにはたばこの煙があったことが多く報告されています。 その他に、子どもへの受動喫煙の影響として、肺炎,気管支炎などの呼吸器感染症,気管支喘息の発病と悪化,咳などの慢性呼吸器症状、そして、胎児への影響として低体重出生,早産,周産期死亡、自然流産,先天異常,出生児の認識や行動の障害,小児がんなどがあります。 これまで、煙の見えるたばこの受動喫煙の危険性について多くが語られてきましたが、煙が見えない新しいたばこは「受動喫煙の危険がない」とか「副流煙が出ないために周囲への影響が少ない」などとして、急速な広がりをみせています。 しかし、煙の出ないたばこを吸った呼気には、大量のエアロゾルがあり、見えない「呼出煙」として、量は少ないものの、煙の見えるたばこと同様に多くの有害物質を含んでいます。 “日本呼吸器学会”は「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。」との見解を発表しています。 世界保健機構(WHO)も、「新型たばこも“リスク” 規制必要」との報告書を、今年7月に提出しています。従来のたばこより健康上のリスクは軽減されるとして販売促進されているが、「しかし、これらの製品にリスクがないわけでなく、長期間における死亡率などへの影響もまだ分かっていない」と強調しています。 ひょっとして、煙の出ないたばこは、煙のでるたばこより危険なのかもしれません。 |