松尾小児科HPへ ≫ 「今日も元気で」topへ

NO. 251

鶏卵アレルギー発症予防に関する提言

平成29年7月

 食物アレルギーの増加は、世界的な問題となっています。そして、各国の小児アレルギーの研究者が、食物アレルギーの発症予防に取組んでいます。

 6月16日に、日本小児アレルギー学会が、「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表しましたが、その提言の骨子を紹介いたします。

*アトピー性皮膚炎に罹患した乳児では、鶏卵の摂取が遅いほど鶏卵アレルギーを発症するリスクが高まるというエビデンスに基づき、鶏卵アレルギー発症予防を目的として、医師の管理のもと、生後6カ月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する。

*鶏卵の摂取を開始する前に、アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい。

*乳児期発症のアトピー性皮膚炎、特に重症例では、この提言を実行するにあたりアレルギー専門医や乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの管理に精通している医師による診療を受けることを推奨する。

*鶏卵の感作のみを理由とした安易な鶏卵除去を指導することは推奨されない。

*本提言は発症予防のためであり、すでに鶏卵アレルギーの発症が疑われる乳児に安易に鶏卵摂取を促すことはきわめて危険であるため、「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に準拠した対応をする。

 日本のアトピー性皮膚炎と診断された乳児を対象にした研究で、アトピー性皮膚炎をしっかり治して、微量の卵白を食べた乳児の方が、食べなかった乳児より鶏卵アレルギーが少なかったのです。その研究から上記の提言が出てきました。

 また、「鶏卵の感作」とは、血液のアレルギー検査で卵白が陽性の状態ということです。卵白によるアレルギーの症状がないのに血液検査が陽性だけで食べるのを止めるのは良くない。逆に、食べないことにより、症状のでる本当の食物アレルギーになってしまう、ということです。

 食物アレルギーでは、厳格な食物除去を指導していた時期もありましたが、食物アレルギーの頻度は減りませんでした。「症状がないのに検査だけで食物除去をしないでくれ。少しずつ食べたほうがいいのですよ。」が小児のアレルギーを診療している医師の訴えだと思います。

松尾小児科HPへ ≫ 「今日も元気で」topへ