NO. 241 風邪(感冒)について 平成28年9月 「感冒はウイルス性疾患である。鼻汁および鼻閉が主に観察される症状であり、筋肉痛や発熱などの全身症状や徴候はみられず、あっても軽度である。鼻炎とよばれることが多いが、限局した副鼻腔病変も含んでおり、正確には鼻副鼻腔炎とよぶ。」 世界で一番有名な小児科の教科書(ネスソン小児科学)の「感冒」の定義です。 発熱が軽度ということは、38度まで、そして全身症状もあまりみられないならば、高熱や筋肉痛、咳などを伴うインフルエンザやRSウイルス、アデノウイルス(プール熱など)は感冒ではないのかと思いながら読み進めると、感冒の原因にインフルエンザやRSウイルス、アデノウイルスが書かれています。どうも世界一の小児科教科書にしては、納得がいきません。
お母さん:「風邪ですかね。」 私:「そうですね、風邪でしょうかね。」と、あやふやな返事になるのも仕方がないかと思ってしまいました。(お許しください)
さらに、ネルソン小児科学には 「幼児は1年間に平均6〜7回、感冒に罹患するが、小児の10〜15%は1年間に12回は感染する。罹患は加齢とともに減少し、成人期には年に2〜3回となる。生後1年以内に保育所に入った小児は、家庭内だけで保育された小児よりも、感冒の罹患率が50%高い。保育所で過ごした期間が長くなるにつれて、これらグループ間の罹患率の差は減少するが、少なくとも生後3年間にわたり、保育所のグループのほうが罹患率は高いままである。」とあります。 子どもは、大人になるまでに150回ぐらいは感染症に罹るとされています。早く集団生活を始めれば、早く病気をもらったり、あげたりしながら大きくなるということです。しかし、それも3歳までの我慢ということでしょうか。
お母さん:「こんなに風邪ばかりひく子はいるんでしょうか。」 私:「集団生活を始めた時は、こんなもんですよ。3歳過ぎるとあまり、風邪をひかなくなります。そして、小学校に入ると、さらに病気は減っていきます。小学生になると、みんなあまり来なくなります。」
小児科の外来は、ほとんどが「風邪」です。しかし、その「風邪」を正しく診断して、適切な治療をするのは、結構、難しくて、いつも悩んでいます。 |