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NO. 226

育児学と小児科学

平成27年6月

 お母さん:「先生、今日、この子、お風呂に入ってもいいんでしょうか?《

 私:「・・・・・・・・?《

 40年近く前(もうそんなになりましたか)の、小児科医になりたての私、もちろん結婚もしていなくて、自分の子供もいない私、さらに、小児科の教科書には、「風邪《のときのお風呂の入り方など載っていません。新米小児科医の私には、答えに困るお母さんの質問でした。


 「小児医療における育児の重要性《(横田小児科医院院長:横田俊一郎)という小論文がありました。

 今から60年前は3人に一人(35.4%)が15歳未満の子供でしたが、現在は8人に一人(12.9%)となっています。

 育児が困難となっている一番の要因として、少子化つまり子どものことを知らないままで親になる、次に核家族化や地域社会の変化により周囲に助けてくれる人がいない、等と書いてあります。さらに、育児書や育児雑誌に振り回されてマニュアル育児になっているとしています。

 一方、小児科外来の変化として、受診者の減少(小児人口の減少)、重症感染症の減少、心の問題の増加、健診・予防接種・事故予防の重要性の増大とありました。そして、小児科外来で育児支援が必要と考える、または育児支援に取り組んでいる小児科医が20年の間に約2倊になったとするアンケートの紹介もあります。


 小児科の先輩に「自分の子供を一人前にして、初めて、一人前の小児科医だ。《

 と教えられたことがあります。最近、「自分の子供が一人前になる《のはいつだろうと考えます。一つの答えが、私が死んだときに、「育ててくれて有難う。《と子供が感謝してくれた時かなと思うことがあります。小児科医としては、生きている間はいつまでたっても半人前ということです。

 小児科医には、いろんな子供たちとかかわってきてお母さん達より多くの経験と、科学としての小児科に関する知識があります。そこから、お母さん達の勘違いには明確な回答ができます。

 しかし、育児には回答が一つだけではありません。多くの場合は、お母さん達と一緒に考えながら前に進んで行くことになります。困った時には、育児書を見る前に、小児科医をはじめまわりの人に相談して下さい。

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