松尾小児科HPへ ≫ 「今日も元気で」topへ

NO. 140

子供の感染症について(感染症と予防接種)
(津山市のホームページの“健康ミニ講座”に載せてもらった原稿の一部です。)

平成19年 12月

赤痢:9573→2、腸チフス:2926→0、
ポリオ:1009→0、ジフテリア:3390→0、破傷風:2221→9、
百日咳:17001→0、麻しん:20939→25

 上記は、それぞれの感染症で亡くなられた方の数の推移です(百日咳と麻しんは届け出伝染病であり、全数ではありません)。左の数は戦後2年目の昭和22年(1947年)、右はその半世紀後の平成10年(1998年)です。戦後のしばらくの間は本当に多くの子どもたちが感染症で亡くなっていました。
昭和23年(1948年)、占領軍の指導の下に予防接種法が制定され12疾患(痘瘡・ジフテリア・腸チフス・パラチフス・百日咳・結核・発疹チフス・ペスト・コレラ・しょう紅熱・インフルエンザ・ワイル病)の予防接種が罰則のある集団防衛義務接種としてはじまっています。
 特に赤痢や腸チフスなどの減少は生活環境の改善によるところが大ですが、予防接種も子どもたちの病気の減少、死亡の減少に貢献してきました。そして、ポリオ・ジフテリア・破傷風などの疾患には日常の診療では、まず遭遇することがなくなってきました。
 「ほとんど発症が無い病気の予防接種は必要ないだろう」と思われるかもしれませんが、予防接種で抑えているから発症が無いのです。2005年、日本ではポリオの発症は0人ですがインドネシアでは299人の発症がありました。世界ではワクチンを使ってポリオを地球上から根絶しようと努力しています。ポリオ根絶宣言が出るまでは、ポリオの発症の無い日本でも、ポリオ予防接種は必要です。
 麻しんは、古くから「命定め」の病気とされていました。また、フランスでは「子どもの自慢は麻しんが済んでから」とも言われています。麻しんは予防しなければ一生の間に必ず罹る病気です。日本では毎年50人前後が麻しんで亡くなっています。これは、インフルエンザに次ぐ多さです。今年(2007年)の春には関東から全国への流行があり、社会問題となりました。南北アメリカ大陸の国々や韓国ではすでに麻しんを排除しており、「日本は麻しんの輸出国」との悪評もあります。2006年よりMRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)を2回接種するようになっています。日本国内での麻しん排除を期待したいと思います。
 「予防接種をしても病気が軽くなるだけではないですか?」と質問を受けることがあります。予防接種の効果は100%ではありませんが、麻しん予防接種の場合は、1回で95%〜98%の効果があるとされています。つまり、1回接種をすれば、100人のなかで95人は生涯、麻しんに罹らないということです。2回接種をすればほとんどの子どもが「命定めの麻しん」から解放されます。また、任意の予防接種ですが、おたふくかぜワクチンでは約90%の効果です。水痘ワクチンの場合は70〜90%の効果とやや落ちますが、運悪く10〜30%に入って発症しても軽くなるとされています。水痘ワクチンのように病気を軽くする効果もありますが、病気に罹るのを防ぐのが予防接種の目的で、90%前後の子どもは予防接種を受けた病気には罹らないのです。
 「副作用が心配です」とお母さん。「残念ながら、重篤な副作用で病んでいるお子さんがいるのは確かです。副作用の全く無い予防接種はありませんが、以前と比べて副作用の頻度は非常に少なく、症状もずっと軽くなっています。予防接種で救われる子ども数が圧倒的に多いから予防接種が行われているのです。是非、予防接種を積極的に受けてください」

「子どもの感染症について」や「予防接種に関する詳しい情報」は下記のところも参考にして下さい。
*津山市ホームページ
子どもの感染症について(平成17年3月)
http://www.city.tsuyama.lg.jp/index.cfm/9,3962,24,268,html 
生活便利帳 >子育て > 予防接種
http://www.city.tsuyama.lg.jp/index.cfm/9,0,22,54,html
*細菌製剤協会
http://www.wakutin.or.jp/

松尾小児科HPへ ≫ 「今日も元気で」topへ