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NO. 111

母乳の栄養

平成17年 6月

 これまでの母子手帳には、1歳健診のページに“断乳がすんでいるか、いないか”を聞く項目がありましたが、最近では“母乳を飲んでいる、飲んでいない”となっています。

 “断乳がすんでいますか”と聞かれると、「1歳になっても母乳を飲ませていたらいけないのか」と思ってしまいます。それが、母乳を飲んでいるかどうかを聞くだけとなりました。

 1歳近くになると、母乳の栄養はかなり少なくなっているといわれた事がありました。そして、私も、「1歳になったからといって母乳を止める必要はないですよ。でも、母乳の栄養はかなり少なくなっていますから、離乳食はしっかり食べさせてください」とお話をしていましたが、どうも間違っていたようです。

 当然、母乳だけでは足りませんが、1歳の母乳でも、6ヶ月の頃の母乳と同じほどのエネルギーやたんぱく質がしっかりあるようです。やはり、お母さんと神様はたいしたものです。

 母乳を与えることは、母子関係の構築に大いに役立ち、乳幼児突然死症候群や乳幼児虐待が減少するとされています。 

 アメリカ小児科学会は「母乳育児は少なくとも12ヶ月、それ以後は母子が望む限り長く続けることが勧められる」(1997年)と述べています。また、第55回世界保健総会の「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」(2002年)では、「生まれてから6ヶ月間、母乳だけで育てることと適切な補完食を食べさせながら母乳育児を2年以上続けること」を勧めています。

 もう一つ、「母乳なんですけど、ちょっと肥満だと思うのですが、いくら飲ませてもいいのですか」と聞かれる事のよくあります。

 「いくらでも飲ませてください。赤ちゃんはお腹が一杯になれば、自分で飲むのをやめますから。必要な量だけ自分でわかって飲んでいますから」となりますが、哺乳瓶の場合には状況が変わります。

 哺乳瓶で飲ますと、赤ちゃんがお腹が一杯になり、ミルクを少し残してやめようとすると「あと40mlだから頑張って飲もうね」となり、「飲みたいだけ飲む」ではなくて「飲ませたいだけ飲ませる」になってしまいます。哺乳瓶で飲ます時には、飲まなくったら無理強いしないで下さい。哺乳瓶を空にすることには余り意味が無いということです。

 小児内科(37、2005)の“小児の食と栄養Q&A”からです。次回もこの続きで。

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