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NO.87

予防接種(2)ブースター効果

平成15年 6月

 今回も、主に小児内科2000.32.10:予防接種Q&Aという雑誌を参考にして、予防接種について書きます。

 人間の体には、自分とは違う物が体に入ると、それを一生涯記憶する力があります。そして、記憶すると共に、この物体を排除する反応が起こります。これが免疫反応です。また、この物質が2回目に体に入ると、最初に比べより早く、より強く反応が起こります。これが、ブースター効果と言われます。

 英語の辞書を見るとブースターとは:後押しする人、増幅器、多段式推進ロケットの打ち上げ用ロケット、効果促進剤:とあります。

 初めて、麻疹のウイルスが体の中に入ると免疫反応が起こり、ウイルスをやっつける武器を作ります。しかし、武器が完成するのに少なくとも2週間は必要です。それまで、ウイルスはやりたい放題で、体のあっちこっちで悪さをします。武器が完成して、ウイルスと戦い始めると、発疹が出てきて熱が下がってきます。だから、発疹は、免疫反応の結果作られる武器と麻疹の戦いの跡なのです。免疫不全の場合には高熱が続き、発疹が出てこず、麻疹の肺炎になって亡くなる事もあります。“麻疹が内攻すると怖い”というのは、なかなか発疹が出てこない状態、つまり免疫不全のことだと思います。

 そして、2回目に麻疹ウイルスが入ってくると、最初に作った武器の残りが麻疹ウイルスと闘うと同時に、ブースター効果が働いて、いち早く対麻疹用武器の生産が十分量起こり、麻疹ウイルスを進入口でやっつけてくれます。

 この反応を利用したのが予防接種です。弱くした麻疹ウイルスを使い予防接種をして、軽い麻疹に罹った状態とします。そうすると、予防接種の後に、本物の麻疹ウイルスが進入した時に、残っている武器とブースター効果が働き、進入口で麻疹を退治するのです。

 アメリカでは、麻疹ワクチンを2回接種しますが、日本では、ポリオワクチン以外の生ワクチンは通常1回接種です。また、「麻疹の予防接種をしたのに、おとなになって麻疹に罹ってしまった」が問題になっています。

 ワクチンが効かない原因に2通りあると言われています。第一は、予防接種の薬か接種の時機が悪く、最初からワクチンに対する免疫が付かない場合、第二は、免疫が一度は付くのだが、次第に弱くなる場合です。

今回はブースター効果についてでしたが、次回はワクチンの効かない原因について、このブースター効果も関係があるのですが、少し詳しく書いてみます。

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