NO.78 10年間で30倍(U) 平成14年 9月 前回は「10年間で30倍」となった「小児虐待」について、第10回岡山小児心身症研究会でのシンポジウムの資料から :虐待の最初の段階は、「養育作業の不調感:子どもにまつわる事がうまくいかない」からはじまるようです。育児がどうも上手くいかないと思ったり、心配事があったならば、育児書などをみて、あれこれ悩み、自分で不安を解決しようと努力するようりは、近くの人に相談するほうが、ずっと早道で確かな道だ:と書きました。 今回は虐待の次の段階について書きます。 「養育作業の不調感」の次は、「養育者としての能力の否定、自信消失」、そして、否定された自分への「防御機制の形成され、我が子への怒り」になるようです。 こどもが、思うように育ってくれないと思ってしまうと、「子育てが上手くいかない、失敗したのだろうか」「わたしが悪いのだろうか」「わたし、母親として失格なのだろうか」「わたし、ダメな母親ね」となります。そして、このどうしようもない不安の解決手段として、「子どもが悪いのだ」となります。 シンポジウムである演者が次のようなことを言っておられました。 :県外から来たお母さんが「岡山に来て本当に良かったです。子どもと歩いていると、知らない方から“かわいい赤ちゃんですね”って声をかけられたんです」と言って喜んでいました: このお母さん、知らない人に一声かけてもらっただけで、育児のついての自信が湧いてきたのかもしれません。 「子どもが悪いのだ」の後は、「体罰・折檻・虐待の発生」、そして「虐待の激化・慢性化」となるようです。 一度、虐待が発生してしまったら、後戻りは困難なようです。「子育てが、どうも上手くいかない、自信が無くなってしまった」のところで、虐待の火だねを消したいものです。 自立とは、自分が出来ることと、出来ないことが分かり、出来ないときには助けを求めることだそうです。子育てで悩んだら、近くの人に相談、お願い、甘えることだと思います。 そして、子どもと一緒のお母さんがいたら、「今日は、かわいいお子さんですね」と声をかけてあげましょう。ひょっとして、その一言が、虐待の発生を防ぐかもしれません。 |