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NO.77

10年間で30倍(T)

平成14年 8月

 10年間で30倍」何の数でしょうか。

 第10回岡山小児心身症研究会で「小児虐待」をとりあげたシンポジウムがありました。そのシンポジウムの資料から、今回は虐待を取り上げてみました。

 はじめに、虐待を受ける子どもも、虐待をする大人(90%近くは実の両親です)も非常に悲しく、辛いのです。虐待をする大人を責めることはできません。

 10年間で30倍は、児童相談所における虐待の相談件数です。岡山県では、平成2年度が11件で、平成13年度は417件になっています。以前は、相談されないケースが多かったとは思われますが、毎年、確実に増加はしているようです。人口比で計算してみましと、津山市では昨年約20件の相談があったことになります。虐待を受ける子供の多くは小学生以下ですから、津山市内の子どもの600人から700人に1人は虐待で相談を受けていることになります。しかし、実際には虐待を受け相談までいっていない子どもはもっといると思います。

 児童相談所に相談に行くのは、家族が最も多く、次が近隣の人や知人となっています。相談に行く家族の中には、虐待をしている本人も含まれています。

 虐待は、「養育作業の不調感:子どもにまつわる事がうまくいかない」からはじまるようです。

 具体的には「・大きくならない、体重が増えない ・オッパイののみがわるい ・離乳食を食べない ・寝つきが悪くて泣き止まない ・こぼすばかりする ・いっても聞かない ・なかなか覚えない ・反抗的 ・気が弱い ・病弱のためにいつも心配で通院も大変 ・あやしても乗ってこない ・本当は男の子がほしかった ・顔が△△に似ている」などです。

 育児していたら、誰でも、一度は、上に書いてあるような気持ちになると思います。実際、お母さんたちの相談に「体重の増えが悪いんです。」「離乳食を殆ど食べないんです。」「夜泣きで困るんです。」は多くありますが、殆どの場合、「心配ないですよ。子どもの体重の正常範囲には、ものすごく幅があるのですよ。夜泣きがひどければ、最後の手段、泣かしておくことです。」となります。

 虐待には、もっと複雑な背景があると思いますが、育児不安は引き金になるようです。育児がどうも上手くいかないと思ったり、心配事があったならば、おばあちゃんなどの育児の先輩、津山市の保健師(この3月から保健婦の名称は無くなりました)、保育園・幼稚園の先生や、小児科医に相談することです。育児書などをみて、あれこれ悩み、自分で不安を解決しようと努力するようりは、ずっと早道で確かな道だと思います。

 次回もシンポジウムの資料から、虐待発生の次の段階について書いてみたいと思います。

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