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NO.35

発熱

平成11年 1月

 長野オリンピックからはじまった1998年でしたが、不況とカレー事件で何となくすっきりしない一年で、最後は50年ぶりの水害でした。被災された方々はもう復旧されたでしょうか。1999年は1900年台最後の年です。2000年に向けて明るい光の見える年になってほしいものです。

 小児科の外来では発熱は最も多い症状のひとつです。今回は発熱について書きます。

 発熱の原因の7割はかぜや気管支炎などの気道感染症です。熱の高さだけで病気の重さの程度はきまりません。また、生後3ヶ月以下の赤ちゃんでは重篤な感染をもつ率が20倍あるともいわれています。42度を超える発熱はそれだけで脳細胞に異状をきたすともいわれていますが、そこまでなることはなかなかありません。

 発熱は、生体の防御反応の一つといわれます。体温があがることによって病原体との戦いを有利にすすめるのです。発熱にはセットポイントがあり、一度発熱がはじまるとセットポイントに達するまでは熱を下げる事は出来ません。まず、皮膚の血管が収縮して熱の放散を抑えます。この時に、熱があるのに手足だけは異常に冷たいことになります。そして、筋肉の収縮やふるえがおこり熱を産生します。体温調節で高体温が維持され、病原体との戦いが起こります。熱が下がる時には発熱のはじめと反対に、皮膚の血管の拡張がおこり、汗が出て体温が下がります。

 次は発熱への対応です。熱が高くてもきょろきょろしたり、遊んでいる時は急を要する状態ではありません。熱がある時には快適に清潔にしてあげて下さい。夏ならばクーラーを使って下さい。冬は暖房も必要でしょうが、毛布で包んでこたつの中に入れたりすると、かえって熱がこもり消耗をさせてしまいます、換気に気を付けて、室温は22度前後に、湿度は50%前後がいいでしょう。熱が出て食欲が無くなるのも、防御反応の一つです。無理に食べるとかえって体に負担となります。急性の発熱では栄養は必要ありませんが、十分な水分は必要です。

 熱の上がり始めは、セットポイントまで体温を上昇させるように体の反応がありますから、この時期にむやみに冷やすのはよくなく、寒気を訴えるようでしたらある程度の保温は必要です。しかし、上がりきったあとは、涼しくしてあげ、消耗が強い様でしたら解熱剤を使って下さい。解熱剤には多くの種類がありますが、副作用の少ないものにして下さい。現在、小児科で使われる解熱剤ではアセトアミノフェン(成分名です)が最も使われています。

 熱だけで脳に障害が起こる事はまずありません。暖めすぎないように気を付けて、水分を十分にあげて下さい。

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