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NO.34

乳児死亡率と伝染病

平成10年 12月

 生後1年未満の死亡を乳児死亡といいます。お誕生日までに亡くなる赤ちゃんのことです。普通は1000人の赤ちゃんのうちに何人の赤ちゃんが亡くなるかで表し、乳児死亡率といいます。妊娠からお産までのお母さんと赤ちゃんの環境の改善や、医療の普及により、乳児死亡率はかなり改善されると言われています。政治的・経済的に安定していない国や地域では、社会的な弱者である妊婦と赤ちゃんに救いのてが差し出されるのは最後であります。そのため乳児死亡率は、その国や地域の衛生水準だけでなく、国民全体の生活レベルを反映すりる指標の一つといわれています。

 大正末期の頃の乳児死亡率は150でした。1,000人の赤ちゃんの内で150人が、100人で15人、10人の赤ちゃんで1人か2人はお誕生日の前に亡くなっていました。当時の外国と比べてもかなりの数だったようです。津山では今、一年にだいたい1,000人の赤ちゃんがうまれていますから、大正時代だったら、150人の赤ちゃんが毎年死んでいた事になります。その数が戦後はドンドンと少なくなっていき、私の生まれた昭和20年だいの後半には40〜60になり、最近では4ぐらいまでになりました。いまの死亡原因の第一位は先天異常であります。戦後の50年あまりの間で乳児死亡率はビックリするような改善を示しました。

 子供の病気で大きな変化をしたものに伝染病があります。昭和21年、22年ごろには、赤痢・百日せき・麻しん(はしか)で毎年それぞれ10,000人以上の死亡があり、腸チフス・痘そう・ジフテリア・破傷風・インフルエンザで1,000以上の人が亡くなっていました。それが、生活環境の改善と予防接種の普及により、痘そうのように地球上から無くなった病気もありますし、このような伝染病で亡くなる事は非常にまれとなりました。しかし、いまだに100人以上の方々がインフルエンザで毎年亡くなっています。多い年には1,000人以上の死亡があります。

 人間の知恵で、乳児死亡率を低下させ、色んな伝染病を克服し、最後の一匹まで殺してしまったウイルスもありますが、インフルエンザだけは今のところ言う事を聞いてくれないようであります。インフルエンザも宿主である人間を壊滅する事はないでしょうが、地球上でインフルエンザウイルスだけが生き残ってしまい、地球が”ウイルスの惑星”になってしまう事もあるかも知れません。

 前回と同様にいつのまにかインフルエンザの話になってしまいました。

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