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NO.25

20年前の気管支喘息”母現病”

平成10年 3月

 開園20周年、おめでとうございます。

 私も20年まえに医者になりました。医者になりたてのころと比べてもっとも変化のあったのは気管支喘息の治療ではないかと思います。

 ”母原病”をご存知でしょうか。昔は、気管支喘息の原因ではないにしても、少なくとも増悪因子は母親にあると考えられ、”母原病”なる言葉がはやっていました。”喘息はあまえがあるのだ”とか”体力が足りないから発作が治らないのだ、頑張って病気を治すのだ”などと言われお母さんたちは非常に悩んでいました。そして、重症の気管支喘息の子供たちが療養所などに入院して治療を受けていた理由の一部に家庭から離して生活を送らせる事がありました。 発作の時には、なるべく薬を使わず、腹式呼吸をして痰をだし、”頑張れ、頑張れ”で子供たちは頑張っていました。

 精神的なストレスが、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー性疾患の増悪因子である事は間違いないようですが、昔は、あまりにも精神的要素が強調されてしまい、子供も、母親も苦しんでいました。

 最近では、気管支喘息の患者は減ってはいませんが、病気は軽くなっています。重症な発作を繰り返すために、長期入院をする子供はあまりいません。使っている薬は20年まえと変りませんが使い方が大きく変りました。

 まず、発作は予防することです。発作を繰り返す子供では、元気なときでも薬を飲んだり、吸入をして発作の予防をします。次に、発作の起こったときにはなるべく早く治療を受けて発作を抑えます。そして、発作がおさまった後も安心しないでしばらく治療を続けるのが大事です。発作の後は元気そうにみえても気管支は非常に敏感になっており、僅かな刺激でまた発作が起こります。

 発作は起こらないのが一番ですが、軽いうちに抑え、十分な治療をしておけば、だんだんと発作の回数も減り治っていくのです。”頑張って、頑張って”、気力と体力だけで気管支喘息に立ち向かうと負けてしまいます。そして、精神的な要素はあまりありません。

 気管支喘息の治療方はだいたい整理されてきてきました。しかし、今のアトピー性皮膚炎の治療は20年前の気管支喘息に似ているようです。残念ながら医者の間でもいろんな意見があり、マスコミも騒ぎますし、民間療法も沢山あります。”母原病”がまた復活するかもしれません。一気に治す方法は今はありません。治療をしながら良い状態を維持していけばいいと考えて下さいい。

 次の20年間も二宮保育園が地域の皆さんに愛されて、子供たちが元気に遊べることをお祈りしています。

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