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NO. 228

いじめと虐待

平成27年8月

 岩手県で、中学2年生が、いじめを苦に自殺しました。生徒がSOSを送っていたのに、大人たちが気付かなかったようです。

 いじめの悲しいニュースを聞くたびに、「なぜ、そこまで分からなかったのか。」との思いと、大人たちの自己弁護に落胆します。そして、「虐待に対する対応」と「いじめに対する対応」の違いを感じます。

 虐待は大人の未成年に対する精神的な暴力を含めた暴力ですが、いじめも未成年による未成年に対する虐待、暴力だと思います。

 虐待では、少しでも虐待の気配を感じた人には、通告の義務があります。通告があると、子供を守るために多くの関係者が動き出します。そして、皆の力で、子供を守り、虐待をしている大人を虐待行為から守ります。

 毎年のように、虐待に関する相談件数が増加していると話題になります。残念ながら、実は毎週のように虐待による死亡はあるのですが、死亡件数はやや減少傾向にあります。通告による虐待の早期発見と迅速な対応が、虐待の最悪な結果の増加を防いでいると思います。

 平成25年度の文部科学省調査による「いじめ認知件数」は、185860件です。100人に一人がいじめの被害にあっていることになります。しかし、国立教育政策研究所が小中学生を対象に調査では、中学1〜中学3までの3年間でいじめ被害にあった生徒が71.3%、いじめ加害経験のある者が71.6%となっています。

 文部科学省の調査と、子供たちの気持ちには大きな隔たりがあります。

 平成25年度の調査で京都府のいじめ件数が28118件で、10人に一人がいじめの被害にあっていて、全国平均の10倍の頻度であるとしてニュースになりました。京都府でいじめが極端に多いのではなくて、京都府の先生方が、いじめの早期発見に努めているためだと思います。これは、虐待の通告件数が多くなっていることと同じであります。

 いろいろ細かな数字ばかりでしたが、結局は、いじめの臭いがしたら、いじめの通告をする。いじめの通告があれば、関係者のみんなが取り組むことです。

 虐待をしている人が悪いのでなく虐待行為が悪いのです。いじめをしている子供が悪いのでなく、いじめ行為が悪いのです。いじめ行為による最悪の結果は自殺ですが、そうでなくても、不登校から引きこもりと、いじめを受けた子供の大事な人生を傷つけてしまいます。

 大人たちは責任をもっていじめを撲滅しましょう。

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