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NO.128

動かすと痛がる(?)

平成18年11月

 生後1ヶ月の赤ちゃんの、問診表に「発熱、動かすと痛がる(?)大泣きをする」とありました。チョッと待てよ “動かすと痛がる(?)大泣きをする” か、と思いました。
“発熱” で小児科を受診することは、多くあることですが、1ヶ月の赤ちゃんで “動かすと痛がる” とまで書かれている事はあまりありません。
 前日から微熱があり、朝から高熱となり受診されています。ミルクの飲みは少し減っているが、悪くはない。吐いたり、セキなどもない。育児ノートにしっかりと、ミルクの量や、赤ちゃんの様子が書かれていました。
 病院へ紹介すると “化膿性髄膜炎” でした。

 髄膜炎とは脳や脊髄を包んでいる髄膜に炎症が起こり、神経の症状が見られるものです。
 原因には大きく分けて、無菌性と化膿性があります。
無菌性は多くはウイルス性です。特に “おたふくかぜ” に罹ると合併することがあります。一般にウイルス性は予後良好です。
 一方、化膿性は細菌が原因です。ウイルス性と違い、予後不良のことが多く、今でも死亡率は10%近くです。
10人罹ると1人の子供が亡くなる病気です。後遺症も多く出ます。
早期診断、早期治療が最も重要な病気です。
我々小児科医が最も注意しなければいけない病気です。症状は、発熱・頭痛・嘔吐が3大症状です。

 しかし、新生児〜乳児期早期(この赤ちゃんですが)では、典型的な症状が出ることは少なく、 “なんとなくおかしい” 程度のこともあります。
 幸い、赤ちゃんは、順調に回復しているようです。後遺症もなく元気に退院できるのと思います。
本当によかったです。
 初めての赤ちゃん、生まれてまだ1ヶ月の赤ちゃんのお母さん、おそらく赤ちゃんを初めて抱っこして1ヶ月しか経っていないはずです。 本当にしんまえのお母さんですが、“動かすと痛がる(?)大泣きをする”、なんとなくおかしいと感じたのでしょう。

 小児科医はお母さんの一言で、そして、赤ちゃんはお母さんの愛情で助けられりことが多くあります。