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NO.24

ひきつけ

平成10年 2月

 先日、2歳6ヶ月の男の子のお母さんから「今、ボクがひきつけています。どうしましょうか。すぐに連れて行きましょうか」と電話がありました。しっかりしたお母さんで、特にあわてた様子もありません。一瞬、返答に困りましたが、永くは続かないだろうと思い、熱の程度や、ひきつけの様子を聞いていると、「だんだん、おさまってきました」とお母さん。「両手がかたくなって、次にガクガクとなり、目は上方に向いていました」と病院でお母さんが説明します。子どもの熱は2〜3日続きましたが、その後はひきつけもなく、元気になりました。

 ほとんどの小児科の医者は、はじめて目の前でひきつけている子どもを診たときには、足はガタガタ、手のひらは脂汗でジトーとなり、母親の前で冷静さを装うので精いっぱいだったと言います。このお母さんは、はじめての経験なのに、落ち着いて、しっかりとひきつけの模様まで観察していました。100点です。

 幼児のひきつけのほとんどは熱性けいれんです。大部分の熱性けいれんの予後は良好ですが、一部はてんかんに移行することもあります。 < 生後5ヶ月以下、5歳以上のけいれん。家族内に無熱性けいれんがある。38.4℃以下でおこる。熱が出始めて2日以上経過しておこる。半身とか片手、片足だけのけいれん。15分以上続く。1日に数回繰り返す。全部で3回以上のけいれんがある> これらの症状があるときは要注意です。初めてのひきつけでも、脳波などの検査を受け、薬を飲まないといけないこともあります。しかし、治療を受ければ、ひきつけもおきなくなり、薬も中止できます。検査、治療のためにも、ひきつけの様子をしっかりと観察することは重要なのです。

 それでは、ひきつけたときにはどうするかです。ビックリして、急に抱き上げたり、肩をゆすったりしないで、刺激をせずねかせて、発作の様子を観察して下さい。顔は横に向けて、吐いたものをのどにつめないように気を付けて、吐いたものは外に出してください。 舌を噛むことはまずありません、無理に口をこじ開けて何かを入れる事は、かえってひきつけを長引かせます。私もよくひきつけを起こしていたようで、熱が出ると枕元に、スプーンか割り箸にガーゼをまいたものが置いてありました。そして、”お前がひきつけたときは舌を噛まないように、お父さんは指を噛まれなが頑張ったのよ”とよく言われたものです。痛かったでしょうが、正しい方法ではなかったようです。

 ひきつけは突然やってきます。ひきつけた後に熱がある事に気付くことがほとんどです。あわてずに、顔を横にしてねかせ、発作がおさまってから受診して下さい。しかし、5分以上続くようでしたら救急車が必要です(5分はかなり長い時間ですが)。

 まずは、落ち着いて。

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